恋とは不思議なものです。
心を奪われたら最後、
一日中その人のことを考えてしまいます。
やめようと思っても、やめられるものではない。
そこにいっさいの理屈はない。
頭で考える理由や道理など、
何の役にも立ちません。
イスパニカの創業者、井戸光子は、
スペインに一瞬で心を奪われてしまった人でした。
書籍編集のアルバイトをしていた井戸は、
フラメンコに関連する本の製作にかかわったことで、
スペインを知りました。
興味をもち、訪れたその国で、
完全に、スペインの虜になってしまった。
好きになった相手のことは、
全てを知りたいと思うもの。
そして、知るだけでは飽き足らず、
その魅力をまわりに知らしめたくなるもの。
井戸は、その一心で、『今週のスペイン』を発行するようになりました。
もちろん、まだインターネットなどなかった時代です。
ファクスで配信されていた『今週のスペイン』は、当時、
日本でいちばん速く、正確なスペインの情報を入手できるメディアでした。
それから20年以上が経ちました。
井戸は、スペインに対する熱い情熱を胸にしたまま、
昨年10月に他界しました。
井戸がいなくなった今も、
イスパニカと、井戸の立ち上げたNPO法人イスパJPのまわりには、
同じようにスペインに心を奪われた人が集まっています。
もちろん、私も。
恋した相手にまた会いにいける日を思い描いて、
日々を過ごしています。