2016年12月22日木曜日

言語と食育



言語と食育、一見関係なさそうですが、この本を読んで言葉がいかに食と関係しているか改めて考えさせられました。

フランスでもファストフードにおされて、ワインやチーズの消費が落ちているそうです。そこに危機感を抱いた醸造学や料理の専門家の活動をまとめた一冊です。そこには言葉の教育が深く関わっていました。

ファストフードはその砂糖や油、肉などのバランスで誰でも単純に「うまい」と感じるようにできています。しかし、ワインやチーズ、日本で言えばカラスミや「くさや」などはその美味しさを感じるにはいわゆる「学習」が必要と言われています。しかし、その奥深い味はどんどん学習して堪能することができ、より深く味わうことができます。

どうすれば、深い味覚を学習できるか?
そこで、登場するのが言語表現です。

子供達にファストフードでないお菓子や伝統食を食べてもらい、その「舌触り」「何の味に似ているか」「後味」などなど、どう美味しいかをなるべく具体的に表現させるようにしました。

子供達はその味を深く観察し、差異を見つけようとします。そうして、味覚を研ぎ澄ませ、味のボキャブラリーを増やしていくことで、それを自分の中に体系付けていきます。

言われてみれば、ソムリエという職業も味覚を語彙で表現する職業ですね。

つまり、これは感覚を言語に置き換えるという翻訳という作業なのかもしれません。

たぶん、味覚に限らず、ボキャブラリーを増やすことは物事の微妙な差異を認識することにつながります。そうして世界はより豊かな存在になるはずです。

そういった意味でも、外国語を勉強することは、母語とは違った世界の見方を手に入れることにつながりますし、母語には存在しない感覚を知ることができるかもしれません。

私も美味しいものを食べたときつい「うまい!」で終わらせてしまいますが、食レポのような感想が言えるように意識しようと決意を新たにしたところです。

なかなか面白い本でした。