2016年12月23日金曜日

翻訳は人生を豊かにする

先日、こちらのイベントに行ってきました。

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池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」第2期完結記念トークイベント「今の言葉で古典! 枕草子から平家物語まで」

第1部 18:30~19:30
「枕草子・方丈記・徒然草、エッセーの始まり」
 酒井順子×高橋源一郎×内田樹

第2部 19:30~20:30
この国の歴史は輪廻する―--平家物語と日本文学
 古川日出男×池澤夏樹
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酒井順子さんが「枕草子」を、
高橋源一郎さんが「方丈記」を、
内田樹さんが「徒然草」を、
古川日出男さんが「平家物語」を、
古典から「今の言葉」に翻訳しているのです。
河出書房新社さん、すごい。


大好きな書き手が何人も名を連ねていて、それだけでも魅力的なイベントでしたが、
その場、その時間に身を運ぶというのは本当に大切なことで、
翻訳という作業の意味、文体とリズムの重要性、書き手の意識と読み手の受け取り方、などなど、
刺激的で面白いお話ばかりでした。

そして何より、登壇者の方々が、カッコいい。

立ち振る舞いや顔立ち、ファッションが、というのではなくて(それもあるのですが)、
発せられるその語彙や表現の豊かさ、それらがさっと出てくるスピード感が、
とにかくカッコいい。

先日の食育の話も同じことですが、豊かな人生を歩むためには、
語彙を豊かにしなくてはいけない。

人生には、楽しいこと、嬉しいこと、あります。
悲しいことや、腹の立つこともあります。

同じ楽しさでも、テレビのお笑い番組で腹を抱えて笑うのと、
大自然の中を気の置けない仲間と汗をかきながら歩く楽しさは、
まったく違うものでしょう。

その楽しさの種類が増えれば増えるほど、人生は豊かになります。
人間は、言葉でものを考える生き物だからです。

と、書きながら、私は自分の語彙力や表現力のなさに絶望しているわけですが、
さて、どうしたらそれらが身につくか。
どうしたら、第一線のエッセイの書き手の皆さんのようなカッコよさが身につけられるか。

書く訓練をすることも1つの手でしょう。
優れた文章を多く読むことも役立つでしょう。

しかし、翻訳ほど、表現を身につけるのに効果的な方法はないのではないかと思います。

翻訳は、自分の中にはない言葉を読み取って、自分の言葉にして紡ぎ出す作業です。
可能性の中から言葉を探り当て、当てはめて実際に使い、それを味わってみる。
読むだけ、書くだけより、確実に言葉が身につくのではないでしょうか。

豊かな人生のために、翻訳を。
私も、人生にもっと翻訳を。
2017年の目標の1つにしてもいいかもしれません。