2020年3月30日月曜日

Quédate en casa(家にいましょう)

皆さん、こんにちは。イスパニカ講師の中園です。スペインに心を寄せるイスパニカ・スタッフの一員として、スペインの現状をお伝えしつつ、皆さんにメッセージを伝えられたらと思います。

スペイン政府の発表によると、3月29日の時点でのスペインにおける感染者数は78,797人となり、米国、イタリア、中国に次ぐ数となっています。また、同日までのスペインの死亡者数は6,528人に達し、最多であるイタリアの10,779人に迫っています。28日にスペインで亡くなった方は838人で、イタリアの756人を上回る、一日としては過去最多の数でした。



参照: https://www.elmundo.es/ciencia-y-salud/salud/2020/03/29/5e8065a521efa07b0b8b4649.html


また、サッカーのスペイン一部リーグ、レアル・マドリードのロレンソ・サンス元会長元会長が21日に、フェリペ国王の親戚にあたるマリア・テレサ王女が26日に、ウイルス感染後に亡くなるなど、影響は著名人や王室にも広がっています。

このような状況の中、スペイン政府は29日に閣僚会議を開き、感染拡大を阻止するため、3月30日から4月9日まで国内における緊急を要さない労働に係る移動の禁止を決定しました。経済的打撃はさらに深刻化しますが、国民の健康と命を第一に考えた決定です。

参照: https://cincodias.elpais.com/cincodias/2020/03/29/economia/1585466196_001075.html?rel=mas


実は私は、2月半ばから3月初旬まで仕事でスペインに滞在していたのですが、そのとき世間はまだ「どこ吹く風」の様子でした。2月半ばの感染者数はまだ1桁で、イタリア国籍のバルセロナ市在住者の感染が2月25日に確認され、少し緊張感が走ったかのように思われましたが、マドリード在住の知人とこの件について話しても、「致死率は低く、報道機関は大げさだ。実際、死者は高齢者ばかりだ。」と言っていたのを覚えています。

私は3月3日に帰国しましたが、  スペインは3月一週目を過ぎたあたりで国内の感染者が急増し、その数が5,000人を超えた14日、政府は非常事態宣言を出しました。生活必需品の購入や病院への移動などを除いて外出は基本、禁じられます。学校も休校となり、すべてのレジャー施設やホテル、レストランも原則、閉鎖となりました。この時点では職場への移動は禁じられませんでしたが、多くの企業が従業員にテレワークを命令、推奨しました。

参照: https://elpais.com/elpais/2020/03/14/album/1584179918_645596.html#foto_gal_6
[誰もいない街の風景]

日本に目を向けますと、クルーズ船や人の集まる場所での集団感染、日々増加する感染者に関する連日の報道で、国民全体が注目していることに違いありません。政府による水際対策や大型イベントの自粛要請、全国の小・中・高、特別支援学校の一斉休校が実施され、国民の緊張感も徐々に高まっています。一方で、感染者数は増え続けているものの、特に状況が悪化しているイタリアやスペイン、米国などと比べるとまだその数は少なく、それらの国で起きているロックダウン(都市封鎖)を目の当たりにしていない我々日本人は、まだ事の重大さを理解しきれていないようにも感じています。かくいう私も2月半ば頃までは、スペイン人の知人と同じようにメディアがやや過剰になりすぎていると思っていましたし、症状の深刻さや、自分が感染源となって周囲に迷惑をかける可能性があることについて、きちんと目を向けていませんでした。

しかし日本は今、危機に直面しています。感染者数は増加の一途をたどり、3月29日の感染者数は1,693人、新たな感染者は169人で、特に都内は一日最多の68人となりました。この数は、スペインと比べると確かに少なく、人口比で考えればさらに低い数値になります。しかし、日本がスペインと同じ状況にならないとは言えません。

上記のとおり、アジアに感染拡大が集中していた2月半ばまでは1桁であったスペインの感染者数は、3月に入ると2桁、3桁どころか、数千、数万と加速度的に増加しています。私のスペイン人の知人たちも事態の深刻さを理解し、家から仕事をしたり、自宅学習を行ったりと、この状況を懸命に耐え忍んでいます。そして、感染・死亡者数の減少や感染者の治療に、政府や医療関係者をはじめとする多くの人々が日夜休まず取り組んでいます。それでも感染・死亡者数は増加し続けているのです。

日本の現行法では外出の自粛要請はできても、スペインのような完全な禁止は難しいそうです。しかし、一人ひとりの力を合わせなければこの状況は打開できません。法律による罰則がなくても、少しでも感染の増加を食い止められるよう、それぞれが辛抱し、努力する必要があります。

先日、小池都知事より、先週末の不要不急の外出自粛要請がありました。イスパニカからも

Quédate en casa. Todo desde casa.”(家にいて。すべて家からやろう。)

のメッセージを届けたいと思います。これ以上の感染拡大を阻止するため、自分が感染源とならないため、オーバーシュートを防ぐため、このメッセージが皆さんの心に響いてくれることを願います。