2019年12月31日火曜日

『異世界転送の用意はいいか: 語学教師のためのVR入門 』を読みました

2019年も残り数時間、最後の最後になってしまいましたが、Twitterでクーポンプレゼントの企画を知り、Kindleで『異世界転送の用意はいいか: 語学教師のためのVR入門 』(村上吉文)を読みました。



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語学教育を営む者として、受講生にできるだけ効率よく語学を習得してもらいたい、と思うのは当然のこと。それはもちろん、通学コースであれ、通信添削コースであれ、当校の講座を受講した後に「語学が身に着いた」「学習が進んだ」と思ってもらいたいからです。


難しいのは、その「身に着いた」「進んだ」というのを何で測るかというところで、例えば、DELEなどの試験のためにレッスンを受ける、という方であれば合格したことでそれを実感してもらえます。あるいは、受講後にスペイン旅行をして「現地の人と会話することができました」という感想をいただいたりすることもあります。

しかし、多くの方は、語学の難しさを口にされることのほうが割合として多く、「なかなか単語が覚えられません」「自分の力不足を知りました」という感想をいただくことも、正直少なくはありません。

では、なぜそういう方々が言葉の学習を続けていらっしゃるかというと、それは勉強すること自体が喜びであったり、通学スクールで講師や受講生と一緒にいることそのものが楽しかったり、といったことが大きいように思います。

「先生の実体験に励まされました」「毎回クラスの仲間とお話するのが刺激的です」という感想は、VRで学習する語学とは対極のところにあると言えるかもしれません。

私が『異世界転送の用意はいいか: 語学教師のためのVR入門 』を読みながらずっと考えていたのは、VRを使って効果的、効率的な学習を実現すべき学習者はどのような人たちなのか、ということです。

著者はカナダ・アルバータ州の教育省に勤めていて、「カナダでは外国語教育の分野での VR 技術の応用が進んでいて、例えば僕の住んでいるエドモントン市の教育委員会は、フランス語の授業専用の VR ゴーグルを300台購入し、市内の公立学校に貸し出しています。」とのこと。今、そこに住み、暮らしている子どもたちにとってフランス語が必要だ、という判断で、市がVRによる語学教育を推進しているということで、これを日本に、つまり私の身近に置き換えると、誰が必要としているだろうか、と。

日本の公教育で、外国語学習に、特に英語教育に必要であると国が判断すれば、導入が進むでしょう。しかし、それに意見するのとは別の次元で、私は自分の問題としてこれを考えたいと思いました。

思い至ったのは、というよりも、おそらくは「2019年のこの本の収益は全額が「海外にルーツを持つ子どもと若者のための日本語教育・学習支援事業」を実施しているNPO法人YSCグローバル・スクールに寄贈されます。」ということを知っていたために、その前提で読み進めていたのだと思いますが、私の身近にいて、公の手が届きにくく、しかし切実に語学の学習を必要としているのは、日本に住みながら日本語での教育が難しい子どもたちではないかと思います。

「効果的な」語学学習という言葉の意味するところが、日本語教育の支援を必要としている子どもたちに益するのであれば、私もそれを推進する立場でありたい、と考えます。

ごく個人的な体験からの感想となりましたが(そして、年内ぎりぎりのタイミングになりましたが)、書籍の紹介となっていることを願います。

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よいお年をお迎えください。

2019年12月31日
イスパニカ代表
本橋 祈