2020年7月1日水曜日

「”サルスエラ”やらナイト!」いただいたご質問にお答えします!

6月27日(土)の夜、ZOOMによるオンラインセミナー「イスパニカde”サルスエラ”やらナイト!」を行いました。


日本サルスエラ協会の会長、桜田ゆみさんによるこのセミナーは、開催としては2回目になります。5月23日に緊急チャリティとして行ったセミナーで、「サルスエラの”ABC”」を教えてくださったゆみさんから、「このままZarzuelaの”Z”までお話したい!」ということで、全10回、これから毎月第4土曜日に開催することになりました。



当日、14名の方にご参加いただき、聞かせていただいたのは息もつかせぬゆみさんの弾丸トークと、プロのオペラ歌手、小野勉さんによる生歌。画面越し、スピーカー越しではありましたが、なんとも贅沢な60分となりました。

ご参加いただいた方々からチャットで質問をいただき、いくつかはセミナー内でお答えいただいたのですが、十分時間がとれなかったものもありましたので、こちらで回答をお伝えします。ゆみさん曰く、「講座の続きで口語でお伝えします」とのこと。セミナーの雰囲気を少しでも感じてもらえたら、うれしいです。

(Hさんからのご質問)

原作はどのようなものから取られていますか。

◇サルスエラは基本的にオリジナル台本です。バロックサルスエラ→17世紀はギリシャ神話が主だったので有りものです。「アポロの月桂樹」など。18世紀は民間に寄せたものが主でしたが、こちらはオリジナルです。農夫たちの物語もあったようです。

19世紀からのロマンティックサルスエラはほとんどといっていいでしょう。完全オリジナルです。

オペラのように原作がシェイクスピア… とかは無いです。しかもオペラを完全に逆手にとったパロディだったり、聖書に登場する聖人をコメディにしたり、オペラ「アイーダ」をネタにしたり、100年前からしょうもないこと考えてたスペイン! その逆に、涙涙の切ないメロドラマもあります。

このようにサルスエラは物語の種類にバリエーションがあり、イイ台本がたくさんあります。

オペラのように人が死ななくてもドラマチックな台本、これは必見ですよ。

わたしも大好きな台本作家がいますので、Zoomサルスエラ講座3回目以降で落語家、講談師バリに中身を紹介してまいります。

フェルナンド7世の時代は反動政治だったと思うのですが、お話ではサルスエラは別に弾圧されてはいないような印象でしたがそのようなことだったのでしょうか。

◇フェルナンド7世の統治下、不安定極まりなかったですね。Hiromiさんのおっしゃるとおりの時代です。

この王様、翻弄されて自分の意志が通らなかった気の毒な王だったようです。

ご自分の希望では、自由化した開かれた王室、政治を目的にしたいと言っていましたが、側近から猛反対をくらって…
で、晩年は病床で奥さんマリアクリスティーナ王妃のいいなりです…

なので、フェルナンド7世のご意志が察しきれないのですが、1830年には確実にサルスエラ(芸術)が復活しているので、晩年、マリアクリスティーナ王妃の助言から、芸術やサルスエラへの弾圧も緩くなっていたのではないでしょうか

もっと深く研究したいところです。


(1.の質問に関連して)スペインの作品がベルディの作品になっていたりするので…

◇おっしゃるとおり、スペインを題材に稼ぎまくったイタリア人作曲家ヴェルディ「ドン・カルロ(フェリペ2世の息子カルロス王子)」ほか、バスクが舞台のドニゼッティ作曲「愛の妙薬」などたくさんあります。

あの時代のイタリア作曲家をインタビューしたいところですよ!(タイムマシンに乗って!)

実はサルスエラ作曲家や歌手にとっては、今でもトラウマ?的な意見を聞きます。(彼らはバルで飲むと正直になるわけですが… 笑。)

「本当はオペラよりサルスエラが好き。もちろんオペラは歌うけどね… この2つは全く違うものさ!オレは本当はサルスエラを歌いたいんだ!」っと言うスペイン歌手は、けっこう多いんです。ご存知プラシド・ドミンゴ先生も同様です。


 「イル・トルヴァトーレ」の主人公とトナデージャが重なるような気がします。

◇それは確かにそうですね!なんだかスペイン人の気質というのが、ドラマになるのでしょうか。

わたしはイタリア人の気質というものに触れて暮らしてはいないので、スペイン気質のような理解はしかねますが、トロバトーレの物語のドラマ性はトナディージャに通じると言えますね。

ただ彼らはジプシーではなかったと思います。まぁオペラではドラマティックに描かくために、ジプシー仕立てにしたのかもしれませんね。(哀れな者たち、忘れられた者たち…なんて言われて方もされていましたから。)


(Rさんからのご質問)

サルスエラを劇場で観る場合は、手軽な値段で見られたのでしょうか?

◇とてもお手頃です! びっくりおトク、休憩中にはお酒もコーヒーもさほど高くない値段で飲めますよ!

近くには素敵なバル、レストランも有ります♪ お値段は10€=1200〜1300円として…
10€(2〜3階の横のゾーンの後ろの席)、9€〜11€(ボックス席・貴族の逢い引きに使うような2階横の個室)、30〜40€(2階席の中央〜端)、100€(一階席の中央)=12,000円ですよ。安いですよね〜〜〜〜

お話にあったサルスエラの劇場や学院は今でも残っていますか?

◇サルスエラ劇場は、当初建てられた所から場所が変わりましたが、ずっと有ります。
次回お話する、ヘネロ・チーコ(一幕物のサルスエラ)上演専用のアポロ劇場も、場所が変わりましたが存在します。

今は「新アポロ劇場」としてミュージカル(ウェストサイド物語など)をロングランしてます。

マリア・クリスティーナ音楽院は、1830年に設立されましたが、その後「スペイン王立音楽院」という名前になり、今もプラド美術館の近くにあります。留学生も受け入れてます。(わたしの前の夫もそこで学びました。あはは 笑)。

ここの卒業生には、作曲家トゥリーナ、ファリャ、歌手はテレサ・ベルガンザ、日本のピアニストでは熊本マリさんがいらっしゃいます。


(Kさんからのご質問)

サルスエラの楽譜は手に入るのでしょうか?

◇手に入ります。2年前に四ッ谷のインスティトゥト・セルバンテス東京にソプラノ、メゾ、テノール、バリトンに分けられたロマンセ集を購入してもらいました。一般貸し出しが可能になっています。

ロマンセとは、オペラで言えばアリアのこと、ミュージカルではソロのことです。
すぐ歌ってみたい場合は、是非セルバンテスへどうぞ!

そして、サルスエラ作品の全曲版はスペイン語で注文が可能ですが、残念ながらほぼ絶版で手に入らないのが現状です。

新版も在庫切れが多すぎで難しいところ。スペイン人の専属歌手は劇場から支給された楽
譜で歌っています。

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ご質問へのお答えは以上です。

「イスパニカde"サルスエラ"やらナイト!」、第3回は7月25日(土)。お申込みは<こちら>から。また楽しい時間をご一緒できることを願って、お待ちしています!