2019年12月16日月曜日

『くろはおうさま』点字シートを日本語版につけた理由

2018年にイスパニカの本橋が発起人となり、皆さんからの支援で目標金額を達成させたEl libro negro de los colores のクラウドファンディング。プロジェクトの成立から1年を経て、先月に無事、日本語版が『くろは おうさま』のタイトルで刊行されました。



日本語版がまだ影も形もない状態で、「美しい本です!」と宣伝してクラウドファンディングに参加していただいたわけですが、書籍ができあがってみて、お伝えしていた通りに、あるいはそれ以上の美しい仕上がりになっていることに、またあらたな感動を覚えました。

特に、日本語版オリジナルの「点字シート」は、デザインとして本当にすぐれた製品になっていると思います。先日、とある書店に見本をお持ちしたときに、店主が「ああ、桂川さんがデザインをされているんですね」と、その美しさの理由について納得されていました。



※装丁・本文デザインを手がけてくださった桂川潤さんのツイッターは<こちら>

この「点字シート」はJIS規格に対応しています。原書にはないこのシートをつけることになった理由について、クラウドファンディングを開始したときにお伝えしていた文章をあらためてお読みいただければと思い、ここに再掲いたします。


===以下グリーンファンディングのサイトより再掲===

スペイン語版の原書にない点字シートを日本語版につける理由

この書籍について、私が日本で翻訳出版する道を探り始めて、すでに2年ほどが経っています。
この間、原書をいろいろな方に見ていただき、ご意見をいただく機会が多くありました。

その過程で私が痛感したのは、私自身がいかに視覚の不自由な方々について無自覚で不勉強だったかということでした。
スペイン語の原書には、見開きの左ページにインクの盛り上がりがあり、その下に銀色の文字でスペイン語が書かれています。

私は単純にこれを「点字がついている」と考え、視覚健常者もそうでない人も、一緒にこの本を楽しめるための仕掛けだと捉えました。しかし、それは全くもって浅はかな考えでした。というのは、目が見えない人々が誰でも点字を使うというわけではなく、また、インクが盛り上がっているだけでは「点字」として用をなさないということも、私にはわかっていなかったのです。すべては、この本の企画を考える中で新たに知ったことでした。

それらのことを踏まえて、サウザンブックスが、この本を視覚の状態にかかわらず多くの子どもにとっての世界を広げるもの、他者の世界との架け橋としてきちんと機能するものにするため、書籍とは別に「点字シート」を付録としてつけるという方法を考えてくれました。
皆さんのお手元に届くときは、一般的な点字の基準に則って制作した点字シートを、書籍に添付する予定です。

===再掲ここまで===

お伝えしていた約束がしっかりと果たされたこと、過去に願っていた未来が手にとれる未来になって絵本と一緒に皆さんのお手元に届いたこと、なんだか不思議ですが、それは当然のことではなくて、制作チームの方々に数々のご苦労があったことと思い、あらためてブログの記事とさせていただきました。

『くろは おうさま』のご購入は<こちら>から。

Amazonや、お近くの書店でもご注文いただけます。