2019年4月27日土曜日

10連休のおともに!? 2018年度の書籍紹介その2

NHK語学テキスト『まいにちスペイン語』のInformación欄で2018年度に紹介した書籍一覧、その2となる後半は、2018年10月号から2019年4月号までです。

☆その1へのリンクは<こちら>

※各書籍の画像をクリックすると、Amazonのサイトにリンクします。




<2018年10月号で紹介>

『クリスティアーノ・ロナウド――生きる神話、知られざる素顔』(竹澤哲、徳間書店、2018)



2018年のワールドカップ直後に移籍が報じられたが、それまで長くスペインのレアル・マドリードでプレイしてきたロナウド。スポーツジャーナリストである著者は、ロナウドが18歳だった時から15年以上、彼を追い続けてきた。生まれた土地の文化や家族から、サッカー選手としてのキャリア、ライバルたちの関係、語ってきた言葉など、「生きる神話」のすべてを知ることができる1冊。巻頭カラー16ページ付き。


<11月号で紹介>

『スペイン語の世界』(岡本信照、慶応義塾大学出版会、2018)



文字のサイズは小さめだけれど、難しい本だと思われてしまったらそれほどもったいないことはない。「スペイン語の歴史」「スペイン語の広がり」「意外な語源さまざま」「スペイン語文学の多様な世界」という目次で、お堅いだけの本だと思われてしまったらそんなに悔しいことはない。この真っ赤な本は、スペイン語について学術的に確かなことを、掛け値なしで楽しくわかりやすく読める本。太鼓判を押してお薦めしたい1冊なのである。


『壮大なる南米旅行記』(内田真喜子、幻冬舎メディアコンサルティング、2018)



体育系の元教師であるKさん、好感度100パーセントのFさん、そして旅行好きな著者、という60代女性3人による「ぶっつけ本番」の南米旅行。成田からペルーを経由してアルゼンチンへ、そして再びペルー、その後ボリビア、チリへという約1ヶ月の旅のドタバタの記録は、なんともたくましい。続発するトラブルを「ま、いっか」「あくまで前向き」「終わりよければ全て良し」と結ぶ“熟女たち”のパワーが紙面にあふれている!


<12月号で紹介>

『わたしたちが火の中で失くしたもの』(マリアーナ・エンリケス著、安藤哲行訳、河出書房新社、2018)



1973年ブエノスアイレス生まれのエンリケスによるこの短編集は、スペインで出版されるやいなや絶賛され、著者の「ホラーのプリンセス」としての地位を固めたと言われた。その世界は、怪奇現象とスラム街やドラッグ、ひきこもり、DVなど、現代的なテーマが混じりあい、普遍的な人間の恐怖心が呼び起される。妄想におびえる若い女性、自分の爪やまつげを抜く少女、9歳の連続殺人犯などが登場する12編。


『いっしょにかえろう』(ハイロ・ブイトラゴ文、ラファエル・ジョクテング絵、宇野和美訳、岩崎書店、2018)



「いっしょに うちに かえってくれる?」少女がライオンに花を差し出してお願いします。ライオンを従えて歩く女の子に、町の人たちはびっくり。背中に乗れば、バスだって追い越しちゃう。途中で保育園へ弟を迎えに寄って、買い物をして、家に帰ったら食事の用意をして。「ママが 工場から かえってくるまで よかったら まってて。」ライオンが帰った後、ベッドの横の写真立てには……。けなげに生きる少女を描いたコロンビア生まれの絵本。


<2019年1月号で紹介>

『パラグアイの伝統レース ニャンドゥティのアクセサリー』(岩井みえエレナ、誠文堂新光社、2018)



ニャンドゥティとは先住民族グァラニー語で「クモの巣」を意味する、パラグアイの伝統的なレース。この本では、日常の装いに合わせやすいようにデザインされたニャンドゥティのアクセサリーが、ネックレスや帽子飾り、ベルト、ブローチなど、23点紹介されている。その色鮮やかな作品は、どれも繊細でありながら素朴な温かみを感じるもの。新しい年は「色と模様が響き合う」レースの作品作りに挑戦してみては?


『穢れなき太陽』(ソル・ケー・モオ著、吉田栄人訳、水声社、2018)


干ばつに苦しむ村に残酷な使命を負って生まれた少女。女として生まれることは罪だと言い聞かせられた娘。実父に犯され娘までもが同じ辱めを受けながら、自分を幸せだと気を紛らわせる老女。メキシコのマヤ先住民である女性作家によって書かれたこれらの作品は、雨の神チャークや儀礼用の飲み物サカなどが登場する先住民の社会から、弱き者たちが息をひそめて住む私たちの現代社会へと、読者の意識をつなぐ。12の作品が収録された短編集。


『スペイン美術史入門――積層する美と歴史の物語』(大髙保二郎ほか、NHK出版、2018)



興味ある読者にとっては待望の1冊、としか言えないであろう、スペイン美術についての本格的な通史。有名な画家や建築家についての各論やそれらを集めたものではなく、アルタミラの先史時代から今日に至るまでを、バランスよく網羅することを念頭に執筆、編集されている。歴史的に、そして地理的、文化的に、多種多様な洗礼を受けて育まれたスペイン美術の本源を明らかにし、その源泉を探る。


<2月号で紹介>

『私が愛する世界』(ソニア・ソトマイヨール著、長井篤司訳、亜紀書房、2018)



ヒスパニック系女性で初めて米国の最高裁判事となった女性の回想録。プエルトリコ出身の両親のもと、ニューヨークのラテン地区に生まれたソニアは、アルコール依存症だった父を早くに失い、若年性糖尿病を患うなど、「自分の幼少期を恵まれたものだと思ったこともなかった」が、猛烈な努力をして「目的の場所」に到達する。原書は英語版とスペイン語版がほぼ同時に発売され、ベストセラーとなった。


『狂人の船』(クリスティーナ・ペリ=ロッシ著、南映子訳、松籟社、2018)



著者はウルグアイに生まれ、後に圧政を逃れてスペインへ亡命した。この作品の中では、エックスという名の亡命者が旅を続けるが、章ごとに語り口が揺らぎ、新聞の断片や詩がはさまれるスタイルは、常に何かを問いかけるようであり、何かを拒んでいるかのようでもある。冒頭に「よそもの」という単語が置かれ、「外国の方なんですか?」「外国人に生まれついたわけではないんです」という会話が交わされる。エックスの、そして読者の、旅の終わりに見えるのは何だろうか?


『タンゴと日本人』(生明俊雄、集英社、2018)



「日本人はタンゴが好きな国民だというのは本当か?」との疑問を皮切りに、アルゼンチンとの交流の中で起こったいくつかの“事件”を突き止め、タンゴブームを起こした仕掛け人や、その他に流行していた歌謡曲との関係など、多くの写真とともに詳しく丁寧にたどる。これまでの歴史を分析した著者は、「タンゴと日本人」の間にはそろそろまた「何かが起こる」と予測しているが、それが楽しみになる1冊。


<3月号で紹介>

『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』(G・ガルシア=マルケス著、木村榮一訳、新潮社、2018)



『百年の孤独』が出版される10年ほど前の1950年代後半に、ガルシア=マルケスがジャーナリストとして執筆した11編のルポルタージュ。「支離滅裂なベルリン」「チェコの女性にとってナイロンの靴下は宝石である」「モスクワ、世界でもっとも大きい村」など、町の様子、人々の声や心情、そこに漂っている空気を書き表す、30代のガルシア=マルケスの冴えきった視点と筆が、なんとも小気味よい。


『標的:麻薬王エル・チャポ』(アンドルー・ホーガンほか著、棚橋志行訳、ハーパーコリンズ・ジャパン、2018)



エル・チャポとは、メキシコの麻薬組織シナロア・カルテルの首領であり、世界最重要指名手配犯だった男の通称。本書はエル・チャポを逮捕した元麻薬取締局捜査官による実名の告白であり、その捜査の裏側は物騒なだけでなく複雑で壮絶。麻薬密輸といった世界が舞台ではあるが、憶測や噂話、大げさな伝説ではなく、事実としての現代の逮捕劇を読むことができる。


『まめつぶこぞう パトゥフェ』(宇野和美文、ささめやゆき絵、BL出版、2018)



スペインのカタルーニャ地方に伝わるむかしばなしが、かわいい絵本になりました。赤い帽子をかぶったまめつぶのように小さな男の子パトゥフェ。サフランを買ってくるというおつかいをやってのけた後、お父さんにお弁当を届けようとはりきって家を出ますが、その途中で牛に飲みこまれてしまいます! 最後に牛のおならとともに飛び出す様子はなんともゆかいでユーモラス。

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以上、14冊をご紹介しました。

皆さま、良い連休をお過ごしください!