2017年2月15日水曜日

映画『ウィスキー』WHISKY

今日は映画の話題。
2004年の作品『ウィスキー』を紹介します。



舞台はウルグアイの町。
都会でもなければ、田舎でもない。
主人公のハコボは、父親から譲り受けた靴下工場を営む、
中年の男性。
毎日、同じ時間に工場を開け、
毎日、同じように不調な工場内を修理し、
毎日、同じ時間に工場のシャッターを下ろして、帰途につきます。

そして毎日、ハコボがシャッターを開けるより前に、
工場の前で彼を待っている中年の女性、マルタ。
マルタもまた長くこの工場で働き、
毎日、同じ時間にタイムカードを押し、
毎日、同じようにハコボにお茶を入れ、
毎日、同じ時間に他の従業員たちを送り出します。

物語は、ハコボの弟、エルマンから、
母親の墓参りにそちらへ行く、
という知らせが来たことで始まります。

弟エルマンは、ブラジルで靴下工場を営んでいるのですが、
ハコボのような不調続きの小さな町工場ではなく、
最新設備の大工場で、経済的に成功を収めています。

工場長と従業員、という関係だけで、
必要以上の会話を交わすこともなかったマルタに、
ハコボは、この弟が来る間だけ、
夫婦のふりをしてほしい、と頼むのです。

ここで予想されるような、とまどいや混乱、驚きは、
マルタには生じません。
マルタは一瞬考えた後で、すんなりと、
事情は分かっているから、と、その提案を受け入れます。

この先は映画を見ていただきたいのですが、
タイトルにもなっている「ウィスキー」は、
写真をとるときの、「はい、チーズ」です。
つまり、作り笑いをするときの合図、
笑おうとして笑うときの言葉です。


3人の関係は、最後まで何かが起こりそうで起こりません。
何も、何も、起こらないまま、
エルマンはブラジルに帰っていきます。

しかし、物語の最後、私は、
何かが決定的に起こってしまった、
あるいは、変わってしまった、
もしくは、全てが絶望的に終わってしまったのだ、
という印象を受けました。

興味を持たれた方、きっと今が見るべきタイミングです。
大きめのレンタルDVD店などで探してみてください。

ウィスキー』(WHISKY)
2004年、ウルグアイ=アルゼンチン=ドイツ=スペイン合作
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール